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精神医学教室Q&A

デイケアで開かれた精神医学教室内の質問を1996年に当時の副院長小久保医師がデイケアスタッフと共に まとめたものです。

はじめに

昭和55年、藤沢病院でデイケアを始めようとした頃は、まだ全国でも数少なく、デイケアというものがどうあ るべきかよく分からないまま、職員が日夜ケンケンガクガクの討議を斗かわせたものでした。
それでも、とにかく活動を開始してから次第に体制も整い、内容も充実してきました。やがてメンバーの数も 増え、プログラムも多彩になってきたころ、「薬の事、病気の事、その他精神科の医療全体の事について、 話を聞きたい」というメンバーの希望で、「精神医学教室」という時間を設けました。
実際は教室などという堅苦しい看板とは大違いで、質問もザックバランで楽しい教室でした。
質問は誰でも持つような身近な小さいながら切実な疑問から、精神医学の根本に関わる大問題まで、時に はドキリとしたり、答えに窮するものもありましたが、答える私の方は、学問は二の次で、少しでもメンバー諸 君の日常生活に役立つよう無い頭は使わず、経験だけをもとにしてお答えしました。
それにしても、まとめにくい質疑応答をこのような形で、読みやすくまとめてくださったデイケア職員の努力に は、ただ、頭が下がるのみです。この小冊子が少しでも皆さんのお役に立てばと願っております。

(元)藤沢病院副院長 小久保 享朗

※「分裂病」ないし「精神分裂病」は現在では「統合失調症」という名で統一されるようになりました。ここでは一応原文のままとしますが以後は統合失調症と読み替えて下さい。

病気についての質問

  • 私は医師から統合失調症といわれています。
    統合失調症とはどんな病気でしょうか?また、どういう人がなりやすいのでしょうか?

    統合失調症の原因はまだ分かっていません。多くは、思春期の頃に症状が現れ、かなり長く続く病気で、いったん良くなっても再発しやすい傾向があります。 しかし、最近では早い時期に治療を初め、すっかり良くなって社会で普通に働いている人も増えてきました。 どういう人がなりやすいか、いちがいには言えませんが、どちらかというと、おとなしくて気が弱い人、人とつきあうのが苦手で1人でいるのが好きな人が多いようです。

  • 統合失調症の他に精神科の病気にはどんな病気がありますか?

    「そううつ病」と言って気分がゆうつになったり、逆に爽快になって元気が出すぎたりする病気があります。「神経症」というのはもともと気の小さい人がこわい思いをした後、何かにつけて不安になる(不安神経症)とか、こだわりの強い人が次第に物事に執着した結果、 一つの事に何時までもこだわり続ける(強迫神経症)など、性格ときっかけがからみ合ってなる状態です。 その他、老人痴呆、中毒あるいは「てんかん」など脳神経系の病的状態に基づく精神科の病気もあります。

  • 統合失調症と神経症はどう違いますか?

    神経症はもともとなりやすい性格の人が何らかのきっかけで症状を表すようになった一つの状態といえます。 それに対して「統合失調症」は原因不明ですがいくつもの要因が重なり病気として発病したものです。 おそらく、脳の中の物質に変化があって症状がでるようで、薬が効果を発揮します。 (神経症でも薬を処方しますが、それは不安などの表面的な症状をとるだけで根本的には精神療法や環境調整によって対処します)

  • 私は自分で病気とは感じられないのですが病気なんでしょうか?

    精神科の病気では、いくつかの病気の時に「自分は何でもない」という考え方に支配されます。内科の病気のように、痛いとか熱がでるとか、あるいはレントゲン検査で黒いかげがでるとか、 いわゆる客観的な症状がないし苦痛もないとすると、病気と認めたくないのはむりからぬ事ともいえます しかし普通ではとても考えられないような事(妄想)を口にしていても自分は何でもないと言うのは、そもそも「考える中枢(脳の一部)」が病気で正常の働きを失ったためです。  やはり、信頼できる人…家族、友人、医師など…に相談しつつその人のアドバイスに従う事が大事だと思います。

  • 世の中には症状が激しく出ない統合失調症という人も結構いるのですか?そういう人は薬を飲まなくても良いのですか?

    たしかに、誰がみても異常というようなはっきりした病気の現れがみとめられないのに、専門医により統合失調症診断される場合が時たまにあります。その時はどのような治療がいいか、微妙な問題ですが、とにかく薬を飲んだ方がいいと思います。 いくつかの理由がありますが、まず「今後いつはっきりした症状がでるかわからないので予防として」、つぎに「元気がない、暗い、閉じこもりがち…」等の状態が少しでも「改善される可能性がある」などです。

  • 私は気が弱いと言われた事が気になるため、もっと強い性格になりたいと思っていました。性格のせいで病気になったのでしょうか?

    性格のせいで病気になったとはいえません。統合失調症の人はやさしくて、気弱で引っ込み思案の性格が多いのはたしかですが、それで病気になったとは言えません。ただ、今後の事を(病気を治して再発を予防する事)を考えると、あるていど気が強くて積極的に言うべき事は言い、我慢づよい性格に変えていきたいものです。

  • 田舎から出てきて20年になりますが、見るもの聞くもの全てが違うので、それが原因で病気になったと考えられませんか?

    都会に出てこないで田舎にいたなら病気にならなかったか?それは何ともいえません。都会に出てきて刺激が強くなり、それが「きっかけ」となって発病した…という事はありますが、それが「原因」となった…とはいえません。「原因」と「きっかけ」の違い、ちょっとむずかしい話ですが…?(病気の症状は環境の影響を受けて強まったり弱まったりするものです)

  • 自分のおじさんが病気なので遺伝と関係があるように思えるのですが?

    1000人のなかの7~8人が統合失調症であるという統計があります。家系を誰でもさかのぼると、病気の人、あやしい人を発見するはずです。遺伝病というのは何万人に一人というごくまれにしか見られない病気だそうです。 こんな点からも、この病気は遺伝病ではない、といえます。

  • 4才の時に2階から落ちたんです。下はコンクリートだったんですが今の病気と関係ありますか?

    頭を打ったりした怪我が原因で統合失調症になるか?これはノーです。知的障害やてんかんの原因になる事はありますが。

  • 精神病は目に見えないのに薬で治すのは納得できません。

    「痛み」は見えませんが鎮痛剤で治します。「熱」も見えませんが解熱剤で治療します。痛みは本人がわかる?では、もし痛みを感じる脳の神経がマヒしていたら?感じません。 脳の中で病的変化が起こると、話す事や行動が奇妙であったり、周囲の人に理解できないものになったりします。 普通なら当然本人もそれに気づく筈ですが、残念ながら「気づく脳」がマヒしていると、気づきません。薬で治療して「気づく脳」が正常に動き出すと、「あの時、私は一寸おかしかったな」と分かるわけです。

  • 入院してどういう状態になったら退院できるのですか?

    なかなか難しい問題です。基本的には、病気についての正しい認識ができ、自分自身で治療を続けられる段階になれば退院可能でしょう。 それでは、実際にどういう認識が正しいか、など細かい事は各人みな違いますので主治医に聞いてください。

  • 歳をとると病気が安定すると聞きましたが再発しにくくなるのでしょうか?

    沢山の患者さんをみていますと、たしかにそういう傾向が見られます。

  • 自分の事を考えると精神科の病気は環境が影響を与えると思えますが?

    たしかに、環境の影響を受けます。入院している人が自宅に外泊すると幻聴が聞こえて、また病院に戻ってきたらすぐ聞こえなくなった…という人がいます。 なるべく良い環境を作る事は必要ですが、かと言って、なんでも環境のせいにするのは、もちろん間違いです。

  • 脳波検査ではどんな事が分かりますか?

    脳波というのは脳細胞からでている電気を皮膚から取り出して記録したものです。ですから、脳の細胞に異常があれば脳波の異常として見る事ができるわけです。「てんかん」は脳波で診断できます。 その他、脳の腫瘍や出血などの診断に利用されますが、統合失調症の診断治療には利用できません。

  • 心理テストはどのような場合にするのですか?

    その人の「性格」のだいたいの傾向を知るために行います。気にしやすい、ゆううつな気分になりやすい、疑い深いとか、あるいは心の奥底にある不安が、 どんな時どんな相手に対して強まるかなどという事がわかります。

  • 生まれつき病気というのはあるのですか? 心が病気だとか健康とかはどうやって決めるのですか?

    心の病気だという症状がでるか(たとえば幻聴が聞こえるとか、妄想に支配されているとか)という事が、長年の研究でわかっているので、その症状がそろえば診断がつくわけです。生まれつき病気とは考えられません。

  • 精神病の人は犯罪者が多いのですか?

    統計的にみてけっして多いとはいえません。

  • 病気が治ったら元通りの体にもどれるのですか?

    病気が治ればもとどおりの体です。ただし「かぜ」をひくと、治った後も、またひきやすいのと同じで,精神病も治った後、また症状が再発しやすいので注意が必要です。

  • 病気から立直るとはどういうことですか?妹は病気で薬を飲んでいますが結婚し、自立しています。

    なかなか難しい質問ですが、普通に近い生活、社会生活にもどれば「立ち直った」といってよいでしょう。 

  • 私は仕事を始めてから薬を飲まずに7年間大丈夫だったのですが再発してしまいました。

    ふつう、仕事に戻れるくらい良くなってから5年間もたつと再発の心配はほとんどなくなった、といえますが、まれに7年たっても再発する人もいます。 困難な状況に直面して再発でなく「新たに病気になってしまった」と考えても良いと思います。 以前の発病を参考にして、いつも将来に備える心構えは必要と思います。

  • 会社に勤めていましたが過労が続き発病しました。目の前が真っ白になり頭が飛んだ感じがし、恐怖感に襲われました。自分の心の弱さがわかり、頑張り過ぎたと思っています。

    「頑張りすぎ」はよく見られる失敗の一つです。かといって、はじめから適当にやっていては社会適応は出来ません。時々ゆっくり休んで、自分の疲れ具合を自分で確かめてみる、家人・友人に頼んでおいて、自分が無理をしていないかどうか聞いて、その意見に従う・・・などの対策が必要でしょう。

症状についての質問

  • 漠然とした不安が長く続くのはどうしてですか?

    いろいろな場合があります。不安神経症のように、特に原因がないのに不安が続く時は、薬を飲みながら、心の中の歪みを少しづつときほぐしていく努力が必要でしょう。 そのほか、うつ病、統合失調症などの時に不安が主症状になる事もあります。主治医に相談して、気長に無くすつもりで療養しましょう。 

  • 幻聴とは死んだ人の声ですか?どうして聞こえるのですか?

    幻聴がなぜ聞こえるか?まだ分かっていません。おそらく、なにか「不安」「怯え」という感情があって、それが「何か言われはしないか」「非難されているのではない」という考えになり「やっぱり言っている」となるようです。その時、脳の中の物質も変化するようで、精神科薬により、幻聴がみるみる消えていく事が珍しくありません。(薬が脳の中の物質の状態を変えた為と考えられています) 

  • 疲れてくると被害妄想が強くなります。

    Q23で説明したように、疲れたりすると、今まで理性で抑えていた「不安」「怯え」などが、頭の中に強くよみがえってくるためと思います。 

  • 自分ではやりたくないのに手が動いてオフクロを殴ってしまいます。どうしたらよいですか?

    自分が行う事は、自分が考えて行ったのだ、と言えるのが健康な状態でしょう。やってしまってから、「あ!まずい事しちゃったな。」と思うと、 弱い心は「自分はやりたくなったのに」と弁解して、なにか他のせいにしてしまいます。 また、本当はそうしたいのに、それをすると皆から非難される、 という場合、「知らないうちに手が動いてしまった」という現象が起こります。「何か言いたい事があったら、はっきり口に出して言う」という強い心が必要といえましょう。 

  • 私はまだ20代なのに物忘れが激しく、お風呂の火を消し忘れたりします。

    人は、自分の身の回りの事をすべて見聞きし、それを記憶するという事は出来ません。知らない間に、「これは大事な事」「これはどうでも良い事」と区分けして、適当に、見てみなかったり、 聞き流したり、覚えたり忘れたりしています。日常生活で物忘れが激しいのは、何か「大問題」が頭の中に陣取っていて、そちらに全神経が集中しているためか、あるいは、 何かショックで脳細胞が疲れきっているためでしょう。いずれにしても、時期がくれば直ります。

  • 私は頭の中が空洞でなにもない状態と感じます。どういう事なのですか?

    頭の中が空洞になる事はありえません(生きていられません)から、たぶん「考える事ができない」「記憶がなくなった」という感覚なのでしょう。何かの原因で精神的に疲れているのでしょう。体を動かして、 身の回りの簡単な事などして時を過ごしていると、だんだん頭の中が充実してくるでしょう。

  • 自分の世界が狭く、子供の頃からの状態が成人になっても続いていると感じます。

    世界は広いほうがのびのびとしていいですね。すこしづつ友達を増やし、回りの物事に興味を向けていくように努力しましょう。

  • 一人になるとぶつぶつ独り言を言ってしまいます。どうしたら言わない様になるでしょうか?

    自分で「一人言」を言っているなーと自覚しているのですから、いずれ無くなるでしょう。一人になると、自分の世界に入ってしまって、現実から離れてしまうのがよくないので、何か具体的な事を考える(たとえば、明日デイケアの朝の一言で何を喋ろうかなど)といいでしょう。

  • 夜は寝付きが悪く、午後になると目が寄ってきます。神経のバランスが崩れてくる感じがします。

    朝、がんばって早起きする事が何より大事な事です。早起きを心がけていれば、やがて寝付きが良くなり神経のバランスも整います。

  • 歩いている時、電柱を数えてしまったり、他の人がいるとトイレで用が足せません。

    いわゆる「神経質」の状態になっているわけです。電柱を数えてもいい、何百本でも数えてやれ、誰もいないトイレを探せばいいやとひらきなおったら良いでしょう。

  • 夢ばかりみるのですが病気のせいですか?目が覚めると嫌な気分がします。

    夢は誰でも意外にたくさんみているようです。ながい夢でもごく短時間にみるのだそうです。問題は、起きたあと夢を覚えているか忘れるか、夢の内容を気にするかしないかです。忙しい人は、目覚めると、さあ今日は何をするか!と先にさきを考えるので夢の事は忘れてしまいます。でも楽しい、いい夢はいつまでも忘れたくないですね。

  • イライラしたらどうすれば良いですか?

    まず、自分が何故イライラしているのか考えてみましょう。人にイヤな事を言われて腹をたてているな、とわかったら、何故彼はああいう事を言ったのだろう?と考えてみます。 このように、何故なぜと繰り返して考えていくと、最初のイライラはいつの間にか無くなってしまうものですが。 もっとも、まったく原因が分からないイライラもあります。そういう時は、イライラ止めの薬を飲んで、気に入ったCDでも聞きながら寝てしまうのも一つの手でしょう。

  • 寝付きを良くするにはどうすれば良いですか?

    昔から寝付きを良くする方法というのは沢山考えられています。有名なのは、羊を数える方法です。コーヒーは良くない、空腹・満腹も良くない、恐いテレビは良くない、 頭を冷やすと良い等もみなさんご存じでしょう。 一番良い方法を考えましょう。簡単ながらもっとも難しい方法”朝早起きをする”事です。

  • 朝、なかなか起きられず目覚めが悪いのですが・・・

    前問で早起きが大事と説明した以上は「早起きには早寝が一番」とはいえませんねー。朝寝たいのは、人間の本能?のようで、歌の文句にもアサネガダイスキデとあります。さて、早起きは大事な事です。何はともかく朝起きてこれをやろうというものを決めてみましょう。犬の散歩、植木に水をやる、新聞をとってくる、何か自分に義務を課して、それが出来たら一点をつける。月末に何点とれるか?目標を達成したら自分に褒美をやるのもいいでしょう。

  • 病気と引きこもりは関係があるのですか?

    あると思います。病気になると人に会うのが恐くなったり、嫌になったり、わずらわしくなったり・・・で引きこもりがちになります。 何とか外に出る努力は必要でしょう。また、引きこもってばかりいると、考えが次第に現実離れし、空想が増えてきて、病気になる事もあるでしょう。

  • 夕方になると不安が増してきます。夜になるのが恐いのですが・・・

    夜になると恐い・・・というのはまさかオバケが恐いのではないでしょうね!これは冗談ですが、夜眠れない人は「夜になると恐い」と言いますね 。安定剤か睡眠剤を処方してもらい、ぐっすり眠りましょう。

  • 退院して1ヶ月になります。そろそろ働きたいと思ってますが、疲れやすく体が思うように動きません。

    まだ時期尚早なのかもしれません。あわてず、すこしつづ体力をつけていきましょう。職場は逃げませんから。

  • 最近薬が変わり、薬を飲んでも吐き気や震えが無くなりました。

    よかったですね。疑問があったら担当医に何でも相談しましょう。

  • 夢の中には自分の気になっている事が出てこないのですが、どうしてですか?

    私にも経験がありますが、いま一番気がかりな事というのは、夢には出てこないようです。経験した事や記憶した事の下積み(少し時間が経って過去の事になったもの)が夢に出やすいようで、現在の物事はそのままの形ではでにくいようだ、と私は思いますが皆さんどうでしょうか。

  • 夜中に動悸が激しくなり、このまま死ぬのではないかと思う時があります。何回も起こるとまたなるのではないかとますます不安になります。

    いわゆる不安神経症の状態と言えます。何回かこういう事が起こると、またなるのではないかと不安になるのは仕方ないでしょう。疲れているとか、心の奥に心配事がかくれているとか、この様な時に不安発作は起こりやすいようです。薬がわりあい良く効きますので担当医に相談して下さい。

  • 調子が良いと思う時と悪いと思う時があります。デイケアに通うのも辛い歩くのも辛い。体の面での辛さが大きいのですが・・・

    調子の良し悪しがあるという事は、変動期にある(固定していない)という事ですからこれから良くなる可能性があるわけで、希望を持っていいでしょう。体の面でのダルサのようなものが辛いようですが、気持ちのユルミが体のダルサとして現れる事もあります。しかし、日常生活で体の健康に良くないと思われる事はなるべく無くしていきましょう。食べ物の偏り、甘い物・ジュースの飲み過ぎ、寝不足、運動不足などに注意しましょう。

  • 退院後、家でゆっくりしたいと思っても家族から働くように言われます。病気のせいにして怠けていると思われると辛いです。

    病気の回復期はとくに大事な時期です。いつまで療養し、いつ働く努力を始めるかは、各個人の状態によっても違ってきて、担当医も慎重に検討している筈です。一度、家族の方が担当医に会い、話し合いをするのがよいでしょう。

  • 以前やっていた仕事は単純作業だったので眠たくなりました。単調過ぎて飽きがくるので作業内容を変更してもらいましたが、最後は体の不調が出て辞めてしまいました。

    職場に復帰する時できれば初めは単調な仕事がよいと思いますが、あまり単調でも眠くなってしまう…難しいところですね。単調な仕事になれてきて眠気が出てきた頃に担当医に相談して、朝の薬を夜にまわす…など試してみたらいかがでしょうか。

  • 世の中には病気でもないのに変な人が沢山いますが、そういう人も社会に適応していれば良いという事ですか?

    するどい質問です。人間には、いろいろ個性があります。個性が強い時、変わっているな…と見られます。言葉を換て言えば「自己主張が強い人」は、変わっているなと見られる可能性があります。(一時期はやったヒッピー族とかモヒカン刈りなどを思い浮かべてください。)もちろんこれらは「病気」とはいえません。病気というのは質的に健康でない(生理的でない)状態を言うので、それにはきちんとした「状態像」(症状の集まり)の定義があります。ただ、「変わっている」だけで「おかしい」すなわち「病気」と考えるのは誤りなのです。

  • 患者同志で結婚していますが、病気が子供や孫に遺伝するのではと心配です。

    経験上、沢山の人達について、親の一方が精神病の時、その子の何パーセントが精神病にかかるかを調査した記録があります。だいたい、16人に一人とされています(両親が病気の時よりは多い)この結果をみると、わりあい多い…といえます。ただ実際に患者さんを沢山診察していると「この人は遺伝的傾向が強いのではないか」「この人はまず遺伝とは関係ないな」などおおよその見当がつく場合が少なくありません。やはり、自分の担当医に相談して決められるのがよいでしょう。

  • ある時期から煙草とコーヒーの量が急に増えました。これは病気のせいですか?又、量が多いと病気に影響がありますか?

    煙草、コーヒーともに、病気のせいで増えた・・・とはいえないでしょう。量が多いと病気に良くないかとの質問ですが、いろいろな意味で良くないようです。どちらも「控えめ」がよいでしょう。

薬についての質問

  • 精神科の薬の種類にはどのようなものがありますか?

    向精神薬剤…幻覚や妄想、興奮などに効果のある強力な薬(向精神薬)  B.抗うつ剤…うつ病に効く薬  C.抗不安剤…不安緊張をとる薬  D.睡眠剤…夜寝られない人のための薬  などが主な薬です

  • 私は病歴3年になります。その間ずっと薬を飲み続けていますが、副作用は蓄積されるのでしょうか?又、どんな副作用があるのですか?

    薬の作用から見て、どうしても避けられない副作用(随伴作用などといいます)として、神経系の症状(手足のふるえ、硬直、眠気など)、自律神経症状(口渇、便秘、血圧低下などがあります。これらに対しては、それぞれ副作用止めの薬があり、対処します。長く服用して出てくる副作用としては、肝臓に対する負担や生理障害、「遅発性ヂスキネジア(口がモグモグ動くなど)」などがあります。副作用と思われる症状がある時は、遠慮しないで担当医に説明対処を受けた方がいいでしょう。

  • 自分では治っていると思うのですが、薬は一生飲み続けなければいけませんか?

    治ったと思って薬を止めると、しばらくしてまた初めと同じ症状を表してくる場合(再発)が意外に多いのがこの病気の特徴で、一度再発すると治療が長びき、時には入院も必要になり、もちろん薬もうんと増やさねばなりません。かといって絶対薬が止められないとは思いません。その人その人により、薬の減らし方、止めて良い時期が異なりますので、担当医と相談しながら慎重に対処してください。

  • 薬を飲んでいても再発する事があるのですか?

    あります。たとえば、飲んでいる薬の「病気を抑える力」が「3」とすると、「病気」が軽くなっていて「病気の勢い」が「1」でありつづければ再発はしない。ところが、何かの事情 (心身の疲労、辛い悲しいできごとに会う、環境の変化、その他現在わかっていない何かのきっかけ)で「病気の勢い」が「5」になれば、その時再発するわけです。 「抑える力」と「勢い」を何とか見極めて、上手に対応していければ理想的なのですが・・・。

  • 他科受診をする時に病気や薬の事を言った方が良いのですか?

    原則として、薬については話した方がよいと良いと思います。 ただし、例外もたくさんあります。たとえば、ちょっとケガをして外科にかかるとか、胃腸が悪くて内科にかかるとかの場合は話す必要はないでしょう。かぜ薬や痛み止めなど飲む時は、作用が強すぎる事もあります。 むしろ、他科に受診(病気についてなど言わず)してのち、もらった薬を精神科の担当医に持参して指示をあをぐ方がよいと思います。 病気については逆に、原則として話さない方がよいでしょう。いずれにせよ、軽い病気で他科受診する場合はいいとして、少しでも重いと思われる時は、あらかじめ精神科の担当医と相談してからの方が賢明でしょう

  • 分包とヒートシールの場合では薬の中身は違うのですか?

    全く同じです

  • 1日4回薬を飲んでいますが、どうしても昼の薬を飲み忘れてしまいます。1日2、3回にならないでしょうか?

    薬は、一日量がどれくらいかが決まっていれば、何回に分けて飲むのか…はあまりこだわらなくて良い、とされていますので、4回より2~3回の方が飲みやすいのでしたら、 そのむね担当医に申し出てください

  • 薬を飲まなくなった時が病気が治ったという事になるのですか?

    今までも何回となく説明したように、再発を抑えるために有効です。ですから「病気は治った。しかし今後は再発しないよう服薬を続けよう」という事がしばしばあるわけです。

  • 薬はコーヒーやジュース、牛乳等で飲んでも良いですか?

    他の薬のようには厳格に考えなくても良いようですが、コーヒーと一緒に飲むと効果が早く無くなるとか、牛乳と一緒だと吸収が悪いなど考えられるので、やはり原則どおり、水かお湯がいいのではないのですか 。

  • 薬を信用しないとダメと思いますが、信じたくないという心もあります。

    デイケアなどで沢山の人に会えますから、皆さんに尋ねてみてたらよいのでは? 「薬を止めて再発しちゃったよ!」とか「飲まないとどうも調子が悪い」「8年飲んでいるが、おかげで入院しないですんでいる」など耳に入れば、やっぱり薬は信用して良さそうだなと思ってくるのでは。

  • 薬を中断するとどうなりますか?

    はっきりいって、止めてから3~4日は体の中に薬が残っていて、そんなに変化は現れないと思います。そのあと、時に一時的に頭が冴える事があります。それで、これはいいと思っているとしだいに「眠れない」「気持ちがうわずる」「落ち着いていられない」から、「音がいやに強くひびいてくる」「何か周りの様子が異様だ」などという病的状態に向かっていきます。 やはり「中断」するというのはよくありません。減らすとしても「徐々に」という事が大事です。

  • 私は薬を飲み忘れる事が度々あります。

    前の質問の答えにあるように、一日ぐらいは飲み忘れてもさして影響は無い筈です。でも「たびたび」という事は、だんだん忘れる事が増えていく心配もあります。 やはりきちんと飲む習慣は続けたいものです。

  • 退院して3年になります。抗うつ剤と安定剤を飲み続けていますが、薬による思考力と記憶力の低下があるような気がします。

    安定剤は精神の緊張をゆるめます。そのため、気持ちがのんびりして、おおらかになります。ですから、どうしても注意力、その場での判断力は低下します。ど忘れも増える事があるでしょう。薬が減ればそれも軽くなり、服薬が無くなれば元にもどります。

  • 便秘の為整腸剤をもらっているのですが、飲むとお腹が痛くなって困ります。

    整腸剤でおなかが痛くなる事はまず無いのですが、下剤ですと腸を刺激してその動きをたかめるので、腸が引きつるような痛みを感じる事はあります。

  • 去年から気功の治療を受けていますが、その先生に安定剤は飲まない方が良いと言われたのですが・・・

    「気功」そのものは、たいへんいい訓練というか体操というか…とにかくやる価値はあると思います。安定剤と併用してやればいいでしょう。飲まない方がいいとは思いません。

  • 風邪薬と精神薬は一緒に飲まない方が良いのですか?

    たいていの風邪薬は一緒に飲んでも大丈夫です。ただ、かぜ薬の中には、眠くなる成分が入っているのがあります。その場合、眠気が強まる事があります。

  • 薬を飲むと身体のだるさを感じ、何もやりたくなくなります。薬をやめたいと思う事もあります。

    精神科の薬を飲むと必ずだるくなる、というものではありません。私の受け持ちのある患者さんは「薬を飲まないとだるくて困る」と言っています。元気(意欲)を出すのに良い… という効能の薬もあります しかし、一般的に「だるくなる」薬があるのは事実ですので、あまり辛いようでしたら担当医によく話して少しでも眠気の少ない薬に変えてもらうようにしてください。

  • 昼間の薬を飲み忘れるのですが、調子が良いのでこのままでいたいのですが・・・

    「飲み忘れて調子がよい」というのはちょっとまずいのですが…。いままでにも述べてきましたが、薬は一日の量が決まれば何回に分けて飲むかは、あまり関係ないようですので忘れる昼の分を夜にまわすとか工夫してもよいかと思います。 昼の分を止めてしまって良いかは担当医とよく相談してください。

  • 首が曲がったり、肩が下がるのは薬の副作用ですか?

    精神科の薬は筋肉系統に作用するので、首が曲がるなどの症状が見られる可能性はあります。私も何人かの患者さんからこれらの事で相談を受けた事がありますが、どの薬をどの位飲むとこの作用が出るのか、各々の人みな違っていて、薬との関連がはっきりしませんでした 一人、ごく少量、それも短期間の服薬で首が曲がってしまったという方がいましたが、整形外科の先生は「体操のしすぎで首の筋肉に負担がかかったためでしょう」と言っていました。

  • 薬を飲み始めたら生理が止まってしまったのですが、薬のせいですか?

    生理障害(無月経)はしばしば見られる副作用です。薬の種類により出やすいものが分かっているので、担当医に相談して、より出にくい種類に変えてもらうのも一つの方法です。

  • 薬を飲んでいて妊娠しても大丈夫なのですか?

    精神科薬で一番多く処方されている薬(ハロペリドール)の「添付文書-効能書」を見ると、「奇形が生じる事が疑われる例が報告されているので慎重に投与する事」と記載されています。私自身の受け持ち患者さんで4人の方たち、その他友人の医師に聞いた話で数人の患者さんたち、全て服薬したまま、妊娠・出産を経過しましたが全部の方が無事安産かつ異常ありませんでした。 しかし大事な問題ですから、たとえば妊娠中とくに初期には休薬ないし減薬するとか、くれぐれも慎重に対処するべきでしょう。 薬の種類によって多少の違いがありますから、担当医とよく相談して決めましょう。

  • 喉が渇いてしょうがないのですが・・・

    口渇も多い副作用です。副作用止めの薬である程度軽くできますので、やはり担当医に話してください。

  • 就労してから薬を飲まなくなったら半年しか働く事ができませんでした。

    就労すると、誰でも緊張し疲れます。三ヶ月、半年あたりが一番疲労がたまる頃です。こういう時こそ緊張をとり疲れを癒す精神安定剤が必要な時期です。 服薬を続けながら社会復帰を成功させましょう。

  • 夕食時にお酒(ビール)を飲んでいるのですが、すぐに薬を飲まない方が良いですか?

    薬を飲んでいる時は、なるべくアルコールは飲まない方がよいですが、少量なら黙認?としましょうか。 アルコールと薬を同時に飲むと異常な効き方(意識障害など)をする事があります。時間はずらした方がよいでしょう。

  • 朝寝坊して薬を抜いてしまう事があります。そんな時は昼の分と一緒に飲んでも良いのですか?

    たいていは大丈夫です。

  • 精神薬を飲んでいる時には刺激物は避けた方が良いのですか?

    そこまで気を遣う事はないでしょう。

  • デパスの副作用に吐き気を伴うと書いてありましたが・・・

    私は知りませんでしたので、改めて効能書を出してきてみたら、「時に悪心・嘔気ありetc」と載ってました。実際に服用している人に「はきけ」を訴えられた事は経験していません。 最近は、効能書に起こりうる作用を全てもれなく書いておくよう指導されているため、滅多に起こらない副作用も乗せてあります。 ついでにいろいろな「効能書」を読んでいたら「睡眠剤」の副作用の欄に「時に眠気あり」と書いてありました。この薬は本当に効くのでしょうか?本当の話です。

  • 朝起きると体がぐったりと疲れています。薬が多すぎるのではないですか?

    その可能性がある事もあり、無い事もあります。自分で決めてしまわず、担当医に相談しましょう。

生活上の問題について

  • 就労するのですが、3ヶ月位で辞めてしまいます。働く時は一生懸命やっているのですが、だんだんと坂をくだるようにやりたくなくなってきます。

    よくある失敗談ですね。皆さん誰でも、3ヶ月目というのは、疲れ、迷い、自信をなくす時期だそうです。まず、「誰でも(自分だけでない)この時期は疲れるのだ」と考える事が大事です。就労すると「サアがんばるぞー」「がんばらなければいけない」という気持ちがあり、普通以上に疲れるものです。坂を下るように疲労が出るのは、自分で「疲れ」を自覚している点で良い事ですから、その時点で「どこかムリしていないか?」「治す事は無いか?(たとえば、就労して嬉しくて夜更かししていないか、つい食事がおろそかになっていないかetc)」「神経使いすぎていないか」「いいとこ見せようとがんばりすぎていないか」などと自己点検しましょう。もしムリしなくても、実際に疲れているようならば、出来るだけ早い時期に休みを取りましょう。 素直に「はりきりすぎて少し疲れました。今日休ませていただきたい」と電話で断ってみたらいかがでしょう。

  • 家族が外出し1人で留守番をしていると落ち込んでしまいます。どうすれば親に頼らなくてすむでしょうか?

    難しい問題ですね。友達がいないのですか?何か、楽しくやれる趣味はありませんか?街へ出て賑やかなところで時間を過ごすのも良いでしょう。

  • 再発を防止するにはどんな事に気をつけたら良いですか?また再発した場合はどのような症状がでるのですか?なぜ再発するのですか?

    この回答を書くだけで一冊の本になりそうです。要点だけ書きます。 まず、なぜ再発するか?よく分かっていません。しかし風邪をひいて治っても又風邪をひく(再発する)、食べ過ぎで胃炎を起こして治っても、又食べ過ぎると胃炎になる(再発)。 では、再発しないのは何か?ハシカは再発しない-免疫が出来るから。糖尿病は?慢性に経過して、食事療法や薬物治療を長期に続ける(それで再発とは言わない)それでは精神病は?。 残念ながら免疫は出来ません。でも、「再発する」事は「一旦は治る」事だと言えます。とすれば、何かと再発を防げば、ずーと治った状態が続く…。 再発した時は、ほとんど最初の時と同じ症状・経過を…とみていいです(しいていえば治療に少し長い時間がかかりますが)。そこで、どうすれば再発が防げるか?という大問題に入りますが、服薬を続ける事、日常生活を規則正しくすごす事などの一般的注意事項は当然として、 「自分のアキレス腱(とくに弱いところ)を知り、その対策を考える」事が大事です。たとえば、お金の問題に弱い(お金が減ってくると心配になり、将来生活できるだろうかと考え込んでしまう。etc)メンツに弱い(友達に皮肉やいやみを言われると自信をなくしたり、職場の同僚は自分の事をどう思っているのかとクヨクヨ考えたり)、異性関係でつまずきやすいなどが考えられます。こういう問題に対して、常に前もって対策を立てておきましょう。 また、再発のごく初期に不眠、いらいら、食欲減退、あるいはヤセなどが「前触れ」として気づかれる事も良くある事ですので、自分自身あるいは身近な人に頼んでおいて、その人のすすめに従い担当医に早めに相談しましょう。

  • 職場ではどう付き合えばよいのかわからず孤立してしまいます。

    どうつきあったらいいのか、特別な方法はないと思います。要するに、自然に・マイペースでいいのです。あんまり黙り込んでいると変におもわれはしないか…などと気をつかいすぎる事が一番いけません。世の中にはいろいろな人間がいるのですから、自分もその中の一人だとすませていれば、まわりでちゃんと受け入れてくれます(渡る世間に鬼は無しと昔の人も言いました)

  • 友達付き合いをしたいのですが、相手の身になって考えられず自己主張ばかり強くなってしまいます。

    相手の身になって考え、話、行動する事は、どんな場合でも必要な事です。しかし、あんまりその事に気をつかいすぎて、後でぐったり疲れ果てる人の方が多いようですが、どうしてでしょうか? 自己主張が強い人は、自分でそれを自覚していれば徐々に治ってきますからあまり気にしない方がよいでしょう。

  • 嫌いな人は避けてしまいます。そういう人ともうまくやっていかなければならないのですか?

    好き嫌いが強いと言う事は「自分がまだ大人になっていない」という事ですね。(好き嫌いなど)感情を、理性(あたま)でコントロールするのが大人です。 嫌いだなーと言う人がいたら、私はなぜあの人を嫌うのだろうと考えてみてください。いろいろな答えが出てくると思いますが…。自分勝手だから。人の悪口を言うから、暗いから…etc。 さてそこで、それでは自分はどうだろうかと反省してみてください。人も自分も似たり寄ったりだなーと気づいてくれば進歩です。

  • 親にちょっと何か言われたりするとすぐに気になりトラブルになってしまいます。

    家の外ではどうでしょうか?それほどカッカカッカしないで抑制できるのではないですか。相手を親だと思うと感情むき出しにしてしまうのは、やはり「甘え」でしょう。 親も他人と考える努力をしていきましょう。

  • 親が自分の病気の事を人に話すので困ります。

    確かに病気の事を他人に知られたくはないでしょう。なぜ親は話してしまうのでしょうか。隠し立てるのはかえって特別の好奇心でみられるから?。心に秘密を持つのは辛いから?。 一度親とじっくり話し込んでみてはいいでしょう。

  • 私は家族の中で一番頭が悪いのですが、気にしなくても良いですか?

    世の中すごすのに、頭の良し悪しはあまり関係ないようですので、気にしない事です。

  • 私はレコードを良く聴くのですが、そのレコードの発売当時の嫌な事を思い出してしまい音楽を純粋に楽しめません。

    感性が豊かな方のようですね。どうでしょうか、「嫌な思い出」と結びついたレコードを聴きながら、今度はすてきな経験をする計画を立てて実行してみては? 多分前の記憶が消え楽しい記憶が連想されよみがえるでしょう。

  • 想像笑いと思い出し笑いは違うのですか?私はアパートに帰るととたんに大声で笑ってしまいます。

    さて難しい問題で笑っていられませんね。「想像笑い」は、実際には無い事について、もしあの人が慌てて転んだりしたらさぞかし滑稽だろうな…などと空想する場合でしょうか。 それにたいして「思い出し笑い」は、今日あの人の靴下が左右ちがう色だったな、そそっかしい人だな…など誰でも経験する事ですね。笑いは百薬の長と言って、健康にも良い わけですが「人のふりみて我がふり直せ」ともいいますから、反省する事も必要でしょう。

  • 先の事を考えると嫌になり不安になります。1、2時間先の事を考えるようにしています。

    人間には、楽天家と悲観家がいます。一般に後者の方が多いとみていますがいかがでしょうか。悲観家は、慎重で計画的で控えめで確実で…と良い面を持っているのですが、時に、クヨクヨと考え心配ばかりします。私の経験では(私も悲観家ですので)、朝、太陽が昇ってくる頃、おいしいものを食べて満腹、こういう時に「今後の豊富」などというのを紙に書いて壁に貼ります。嫌になり不安になった時、その張り紙をみると勇気がわくでしょう。

  • 毎日デイケアに来ていてこれで良いのかと考えてしまいます。

    あなたは健全な考えの持ち主です。これでいいのか?と考えない人こそ問題です。これでいいのかと考えた後、一歩一歩たゆまずあせらず、ひるまず、なまけず努めましょう。

  • その場に応じた会話が出来るようになりたいと思っていますが、思うように言葉が出てきません。

    性格的に「口の重い人」がいます。頭の中で考えても、すぐに口に出ない。あるいは頭に言葉が浮かんでこない。あせるとよけいに混乱しちゃう…。ひとつには慣れていないための緊張してしまう、という事でしょう。うまくしゃべれないからと人前に出ないのは良くありません。「聞き上手」になろうという気持ちでとにかく人の中に入りましょう。 次に、うまく喋ろうと思わないで、ありのままに、思う事を口にしようという考えで、とにかく何か話してみましょう。トツトツでも、一生懸命話せば、聞く人にいい感じを与えるものです。

  • 過去の事を考えると辛くて泣きたくなる事があります。

    誰でも過去に辛い悲しい経験はあると思います、程度の差はあっても。それが、全く無い人、そういう人がいたら、その人は友達に持ちたくないですよね。これから、愉快で楽しい経験をたくさん作って行って、プラスマイナスゼロにして行きましょう。

  • 考え過ぎると働けなくなるので時に頭をカラッポにしたいと思うのですが・・・

    とても良い考え方です。どうやって頭を空っぽにするか?自分で工夫するのが良いでしょうが、たとえば、天気の良い日、草っ原に寝ころがって、青空の中をふわふわ浮かんでいる雲をみて、あれはソフトクリーム、あれは嫌いな○○君の顔、ああ消えたなぁ…などと時を過ごすのはどうでしょうか、ちょっと古いですか?

  • 近所の工場の人が昼休みに楽しそうに卓球をやっているのを見ると、単純な仕事でも汗を流して働きたいと思います。

    本当にその通りです。単純な仕事に我を忘れて打ち込むのは、精神衛生上とても良い事です。そして仕事を離れたら、スポーツに汗を流す…健康そのものです。

  • 人の言葉を律儀に取り入れてしまい、こだわりがどんどん増えて困ってしまいます。やって良かったという喜びが身につかないのは何故でしょうか?

    他人の言葉を律儀(生真面目)に受け止める事は、とても良い事でしょう。人に好かれ、対人関係を保つためにも必要な事です。問題は「こだわりが増える」という事ですが、これは「自分の心が狭くなっている」ためではないですか? 人の言葉を素直に聞き、自分の意見を素直に言う。というようにしていけば、こだわりは残らず、いつも、さっぱりしていて、周囲の物事がありのまま自然に心に入ってきて喜び(満足感)が得られるのではないでしょうか。

  • 感情的にリラックスすると良いと人から言われますがどういう事ですか?

    感情的に、「いらいらする」「どきどきする」「びくびくする」「ぴりぴりしている」などという時、その人は「リラックスしていない」といえます。静かな部屋でおいしくコーヒーを飲みながら 好きなCDに耳を傾けている。その時、息を大きく小おなかにすい込み、体の力を抜きながら、吐く…その時のあなたは「リラックスした」状態です。

  • 私は精神病の人は神経を使い過ぎてすり減っているように思います。

    確かにその通りです。すり減った神経を休め、元の丈夫な神経に再生していく、それが治療です。

  • 私は人から話しかけられると緊張してしまいます。人の目を見て話す事ができないのですが・・・

    いわゆる「内気」な性格なのですね。だんだん「内向的で積極的」な性格に変えていけばよいわけです。自分を必要以上に良く見せようとする(見栄を張る)と、人前で緊張します。ありのままの自分を見てもらおうと努めましょう。自分に自信がない(劣等感)と、人と目を合わせられません。自分にも良い所がある。一生懸命がんばっている自分が好きだと思うようにしましょう。 見栄と劣等感は、うらはら(同時にある)だといえます。両方をなくすよう努力しましょう。

  • 干渉しない方が良いとわかっているのですが、自分のやりたくない事を他人に押しつけてしまいます。

    自分がやりたくない事を他人に押しつけてやらせてしまう(あるいは、やってもらう)という事は、自分本位の甘えと言う事でしょうか?自分がまだ大人になっていないのだ、という事を自覚して、相手と同様の一人の人間として当然責任を果たす義務があるといつも考えるようにしましょう。

  • うそも方便と言いますが、実際にうそをつく事は難しいと感じます。近所の人にどこに勤めているかと聞かれると本当の事を言ってしまいます。

    本当にうそをさらりとつくのは難しい事ですね。簡単にうそをつくようになったら、おしまいですが、私の見るところでは、生まれつき「嘘の言えないタイプ」というのがある、と思います。そういう人は、何でも正直にやっていこうと決心して、なまじっかうそを上手につこうなどと考えず、ありのままに生きると方針を決めてしまったらいかがでしょうか?そうすれば、あなたが「デイケアに行っています」とはなしても「そうですか、頑張ってください」と好意的に受け取ってくれると信じます。

  • 夜中に目が覚めてしまい、その後眠れない状態が続きます。睡眠のリズムをつけるにはどうしたら良いですか?

    昼間、だるいとか眠いとか感じますか?もしそういう事が無ければ気にする事はないでしょう。今後、注意したいのは、まず寝る時間を10時頃に一定にする努力をする事、昼寝をしない事、昼間適度の運動をする事、更に必要に応じて「睡眠剤」を上手に利用する事(担当医と相談する事)などです。

あとがき

この質問集は藤沢病院デイケアセンターのプログラムとして平成3年4月から平成7年3月までの4年間に 行われた「精神医学講座」でのメンバーの発言をまとめたものです。
副院長小久保を講師に病気について疑問に思っている事を気軽に語り合える場にしたいと家族の方にも参 加を呼びかけました。御家族からは、他のメンバーの話を聞く事で自分の子供の理解に結びついたと 反響 がありましたが、5回目からはメンバーと御家族とを分け、もっと本音で話したいとの意向をくみ、御家族が安 心して病気の事をはなせる場として家族懇談会を開く事となりました。 これはやがて家族教室や家族会へと 発展していきました。
月1回の「精神医学教室」では患者様となった人々に当然生じる疑問「自分は本当に病気なのか」「なぜ病気 になったのか」「どんな病気なのか」「治るのだろうか」等の根源的な問題が繰り返し質問されました。メンバー の切羽つまった単刀直入の質問の数々はスタッフにとって医療現場における現実を直視する絶好の機会と なりました。
いまだ閉ざされた感のある精神科の病に患者様自らが質問し続ける事によって生まれたこの質問集が、多くの 患者様の共感と御家族の精神科医療に指針を与えてくれるものである事を心より願っております。

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